ひさしぶりにmicroSDを焼き直したら、入っていたのは Bookworm ではありませんでした。Debian 13「Trixie」に変わっていました。
Raspberry Pi Imager の操作は、今までとまったく同じです。同じように押していって、入るものだけが変わります。だから気づきません。筆者は自分のラズパイのOSが変わっていたことに、この記事を書くまで気づいていませんでした。
この記事は新しいOSの紹介ではなく、実際に焼いて、電源を入れて、今まで書いてきた手順を上から当てていって、どこで詰まったかの記録です。自分の過去記事がいくつか古くなっていたので、そこも書きます。
先に結論から
| これまで(Bookworm) | いま(Trixie) | |
|---|---|---|
| ベース | Debian 12 | Debian 13 |
| カーネル | 6.12系 | 6.18系 |
| Python | 3.11系 | 3.13.5 |
| 設定の渡し方 | firstrun.sh |
cloud-init |
| swap | ファイル | zram |
| VNC | 自分でサーバーを入れる | 最初から入っている |
| 日本語入力 | ibus-mozc で通っていた |
この手順では動きません |
いちばん困るのは、いちばん下の行です。順番に説明していきます。
検証した環境:Raspberry Pi 5 Model B Rev 1.0 / Raspberry Pi Imager v2.0.11.1 / Raspberry Pi OS (64-bit) Debian 13 Trixie(2026年6月18日版)/ 64GBのmicroSDに新規で書き込み。Bookwormからのアップグレードは試していません。財団がクリーンインストールを推奨しているためです。
OSの一覧が変わっています
Imagerの「OS」の画面です。いちばん上に出てくる推奨(Recommended)が Trixie になっています。

全体をツリーにするとこうなります
Choose operating system
│
├─ Raspberry Pi OS (64-bit) Trixie 1.3 GB ← 推奨
├─ Raspberry Pi OS (32-bit) Trixie 1.2 GB
├─ Raspberry Pi OS (Legacy, 32-bit) Bookworm 1.2 GB ← 旧版はこれだけ
│
├─ Raspberry Pi OS (other) ←─────────────────── 64bitの旧版はこの中
│ ├─ Raspberry Pi OS Lite (64-bit) Trixie
│ ├─ Raspberry Pi OS Full (64-bit) Trixie 1.9 GB
│ ├─ Raspberry Pi OS Lite (32-bit) Trixie 523.6 MB
│ ├─ Raspberry Pi OS Full (32-bit) Trixie 1.9 GB
│ ├─ Raspberry Pi OS (Legacy, 32-bit) Lite Bookworm 496.5 MB
│ ├─ Raspberry Pi OS (Legacy, 32-bit) Full Bookworm 2.7 GB
│ ├─ Raspberry Pi OS (Legacy, 64-bit) Bookworm 1.1 GB ← これ
│ ├─ Raspberry Pi OS (Legacy, 64-bit) Lite Bookworm 422.6 MB ← これ
│ └─ Raspberry Pi OS (Legacy, 64-bit) Full Bookworm 3.1 GB ← これ
│
├─ Other general-purpose OS
├─ Media player OS
├─ Emulation and game OS
├─ Other specific-purpose OS
└─ Freemium and paid-for OS
Bookwormに戻したい人が、ここで間違えます
最初の画面に出てくる「Legacy」は、32bitだけです。
Raspberry Pi 4 や 5 を 64bit で使っている人が、Bookwormに戻そうとして、いちばん目につく「Raspberry Pi OS (Legacy, 32-bit)」を選ぶと、32bit版が入ります。操作は間違っていないのに、欲しかったものが入りません。
64bitのBookwormは Raspberry Pi OS (other) の中、それも下のほうにあります。

Raspberry Pi OS (other) の中。ここまで降りると Legacy の 64bit がありますImagerの入手からmicroSDへの書き込みまでの手順は、画像つきで別記事にまとめてあります。この記事では手順を繰り返さず、「同じ手順なのに、入るものが変わった」という点だけを扱います。
焼いた直後から違います
書き込みが終わったmicroSDを、そのままWindowsに挿して中を見てみました。bootパーティション(Windowsから見えるほう)の中身が違います。
| Bookwormまで | Trixie | |
|---|---|---|
| 設定ファイル | firstrun.sh |
user-datameta-datanetwork-config |
| 起動時の指定 | systemd.run=/boot/firstrun.sh |
ds=nocloud |
| しくみ | 初回起動用のシェルスクリプト | cloud-init |
cloud-init(クラウドイニット)……「初回起動のときに、設定を読み込んで反映するしくみ」です。もともとはクラウド上のサーバーを大量に用意するための道具で、それがRaspberry Pi OSにも使われるようになりました。
やっていることは今までと同じです。Imagerで入れた設定を、初回起動で反映する。置いてあるファイルの名前と形式が変わっただけと思ってください。
Imagerで設定した内容(ホスト名・ユーザー名・SSH・Wi-Fi)の渡し方が、まるごと入れ替わっています。実際の user-data は、こういう形でした。
#cloud-config
hostname: trixie
manage_etc_hosts: true
packages:
- avahi-daemon
timezone: Asia/Tokyo
keyboard:
model: pc105
layout: "jp"
user:
name: eugene
shell: /bin/bash
ssh_authorized_keys:
- "ssh-ed25519 AAAA……"
ssh_pwauth: false
runcmd:
- [ systemctl, enable, --now, ssh ]
検索して出てくる手順が、当てはまらなくなります
「firstrun.sh を書き換えて設定を変える」という手順は、Trixieでは通用しません。そのファイル自体がありません。
検索で出てくる記事の多くは Bookworm 以前のものです。書いてあるとおりに探しても、ファイルが見つからないはずです。
Imagerの最終確認画面は、あまり教えてくれません
ついでに気づいたことがあります。書き込み直前の確認画面が、確認に足りていません。

Storage の欄も「Generic STORAGE DEVICE USB Device」だけで、容量もドライブレターも出ません。この直後に出る「すべて消去します」の警告も、同じ表示です。同じ型のUSBメモリが2本挿さっていたら、この画面では見分けられません。
設定が入ったかどうかは、焼いたあとに確かめられます
microSDをPCに挿したままにしておくと、bootパーティションが見えます。その中の user-data をメモ帳で開けば、ホスト名・ユーザー名・SSH鍵がそのまま書かれています。
書き込み先を間違えないためには、焼く前にWindows側でドライブの容量を確認しておくのが確実です。
初回起動に7分近くかかります
電源を入れてから、SSHで入れるようになるまで225秒かかりました。デスクトップ自体は10秒ほどで出ます。だから画面を見ていると「起動した」と思うのに、しばらく何も受け付けません。
Startup finished in 1.873s (kernel) + 6min 47.062s (userspace) = 6min 48.936s
graphical.target reached after 10.065s in userspace
内訳(上位)
6min 20.050s cloud-final.service ← ほとんどこれ
16.270s NetworkManager-wait-online.service
3.687s cloud-init-local.service
数字が3つ出てきたので、整理しておきます。
| 10秒 | デスクトップの画面が出る(graphical.target) |
|---|---|
| 225秒 | SSHで入れるようになる(実際に試して測った時間) |
| 6分48秒 | 起動の処理が全部終わる(cloud-final.service の完了) |
画面はすぐ出るのに、中では7分近く動き続けています。初回だけ cloud-init がパッケージを入れたり設定を書いたりしているためです。2回目以降の起動は、ふつうの速さに戻ります。
固まったと思わないでください。SSHが繋がらなくても、Wi-Fiが見つからなくても、5分ほどは待ってみてください。筆者は最初、焼き損なったかと思いました。
swapがzramになりました
メモリが足りないときの逃がし先(swap)が、ファイルではなくなっていました。
$ cat /proc/swaps
Filename Type Size Used Priority
/dev/zram0 partition 2097136 0 100
$ free -h
total used free
Mem: 7.9Gi 459Mi 6.7Gi
Swap: 2.0Gi 0B 2.0Gi
/dev/zram0、つまりメモリの中の圧縮領域になっています。管理しているのは rpi-swap というパッケージで、設定は /etc/rpi/swap.conf にあります。
microSDにはやさしい変更です
swapファイルはmicroSDへの書き込みが発生します。zramはメモリの中で完結するので、カードを削りません。microSDの寿命を気にしている人には、地味にありがたい変更だと思います。
なお zramctl コマンドは入っていません。見るなら cat /proc/swaps です。
VNCは、TigerVNCを入れなくてよくなりました
ここは、当サイトの記事が古くなった部分です。
2026年8月に「RealVNCが使えなくなったので、TigerVNCを入れて接続する」という記事を書きました。Trixieでは、その作業が要りません。
有効にするのは、これだけです
sudo raspi-config nonint do_vnc 0
画面から操作するなら sudo raspi-config →「Interface Options」→「VNC」です。中でやっていることは同じです。これだけで5900番の待ち受けが始まります。
$ systemctl is-active wayvnc
active
$ ss -ltn | grep 5900
LISTEN 0 16 *:5900 *:*
動くのは wayvnc です
ここから先、聞き慣れない言葉が3つ出てきます。先に並べておきます。
Wayland(ウェイランド)……画面を描くしくみの土台です。昔は「X11」というものが使われていて、Raspberry Pi OS は数年前にこちらへ移りました。
labwc(ラブダブリューシー)……その土台の上で、ウィンドウの枠を描いたり並べたりしている部品です。いまの Raspberry Pi OS が使っているのがこれです。
GNOME(グノーム)……Ubuntuなどで使われている、別のデスクトップ環境です。Raspberry Pi OS には入っていません。
全部おぼえる必要はありません。「ラズパイのデスクトップはGNOMEではない」——これだけ頭の隅に置いてください。この記事の後半で効いてきます。
raspi-config の中身を読んでみると、こうなっていました。
Waylandのとき → wayvnc を有効にする(RealVNCのほうは明示的に止める)
X11のとき → realvnc-vnc-server を有効にする
Trixieの標準デスクトップは labwc、つまり Wayland です。だから wayvnc が動きます。RealVNCのパッケージ自体は入っているのですが、有効化の操作をすると、むしろ止められます。
「TigerVNC」の書き分けに注意してください
Windows側で使うビューア(TigerVNC Viewer)は、今までどおり使えます。実際、それで接続できました。
要らなくなったのは、Raspberry Pi側に入れるサーバーのほうです。同じ「TigerVNC」という名前なので紛らわしいのですが、別のものです。

日本語入力は、前の手順では動きません
この記事でいちばん時間がかかったところです。先に結論を書きます。
結論
sudo apt install ibus-mozc では、日本語入力できるようになりません。
fcitx5-mozc なら入力できました。
まず、焼いただけでは英語のままです
Imagerの「Localisation」で、タイムゾーンもキーボードも日本語に設定して焼きました。それでも、起動したデスクトップは英語です。
$ localectl status
System Locale: LANG=en_GB.UTF-8 ← 英語のまま
X11 Layout: jp ← キーボードは効いている
$ fc-list :lang=ja | wc -l
1 ← 日本語フォントは実質ゼロ
Imagerの Localisation は、タイムゾーンとキーボードは設定しますが、表示言語は設定しません。日本語フォントも入りません。
表示を日本語にする
sudo apt install -y fonts-noto-cjk
sudo raspi-config nonint do_change_locale ja_JP.UTF-8
sudo reboot
順番があります。フォントを先、言語をあとにしてください。逆にすると、日本語表示に切り替わった瞬間にフォントが無く、文字が豆腐(□)になります。
これで表示は日本語になります。ただし、まだ打てません。

nihonngo がそのまま入りますibus-mozc を入れても打てません
前に書いた手順どおり ibus-mozc を入れて、再起動しました。変わりませんでした。

sudo apt install ibus-mozc のあと再起動。nihonngo のままです調べてみると、mozcが「入力メソッドの一覧」に登録されていませんでした。
$ gsettings get org.freedesktop.ibus.general preload-engines
['xkb:jp::jpn'] ← 日本語キーボードだけ。mozcが無い
切り替える先が無いので、半角/全角を押しても何も起きません。
原因は「GNOME専用」でした
mozcを一覧に登録してくれるはずの仕掛けは、こうなっていました。
/etc/xdg/autostart/ibus-mozc-gnome-initial-setup.desktop
Exec=/usr/share/ibus-mozc/ibus-mozc-gnome-initial-setup.sh
OnlyShowIn=GNOME; ← GNOMEでしか動かない
OnlyShowIn=GNOME; は、「GNOMEというデスクトップ環境のときだけ、これを実行する」という意味の1行です。
これが正体でした
さきほど「ラズパイのデスクトップはGNOMEではない」と書きました。ここで効いてきます。
Raspberry Pi OS のデスクトップは labwc であって、GNOMEではありません。だから、この1行が付いている処理は一度も動きません。
つまり ibus-mozc を入れても、mozcを入力メソッドに登録する処理だけが、まるごと素通りされます。パッケージ自体は正しく入っているのに、自動設定が働かない。「入れたのに何も変わらない」の理由がこれです。
これは Raspberry Pi OS 側の不具合ではありません。ibus-mozc というソフトが「GNOMEで使われる前提」で作られている、というだけの話です。悪いところを探しても見つかりません。
中の人
パッケージは入ってる、設定も合ってる、それで動かない。こうなると自分の手順をずっと疑っちゃうんだよね。ここは疑わなくてよかったところ。
そのあと手でmozcを登録して、エンジンも切り替えて、パネルの表示が「あ」になるところまで持っていきました。それでも打てませんでした。VNC越しではなく、Piに直接つないだキーボードでも同じでした。

正直に書いておきます。ここから先の原因は特定できていません。ラズパイ側(labwc)は日本語入力を受け取るしくみに対応していますし、必要な設定も入っていました。それでも、キーを押しても変換に回りませんでした。
原因を追いかけるより打てる方法を出すほうが役に立つと考えて、別の入力メソッドに切り替えました。
fcitx5-mozc で打てました
sudo apt install -y fcitx5-mozc fcitx5-config-qt
im-config -n fcitx5 ← sudo は付けません
sudo reboot
再起動すると fcitx5 と mozc_server が最初から動いています。ただし、ここでも同じ罠があります。
$ fcitx5-remote -n
keyboard-us ← 日本語どころか US 配列
mozcは入っているのに、入力メソッドとして選ばれていません。1回だけ、こう打って登録します。
fcitx5-remote -s mozc
これで打てるようになりました。

nihonngo 4行が、うまくいかなかったときの記録です。その下でようやく変換できましたこの設定は残ります
fcitx5-remote -s mozc は一時的な切り替えではなく、設定ファイル(~/.config/fcitx5/profile)に書き込む操作でした。再起動しても残ります。打つのは1回だけです。
そして切り替えは 半角/全角 キーでできます。ibusのときは Super+スペース でしたが、fcitx5では日本語キーボードのいつものキーが使えます。
まとめると、この順番です
# 1. フォントと入力メソッドを入れる
sudo apt install -y fonts-noto-cjk fcitx5-mozc fcitx5-config-qt
# 2. 表示言語を日本語にする
sudo raspi-config nonint do_change_locale ja_JP.UTF-8
# 3. 入力メソッドをfcitx5に切り替える(sudoは付けない)
im-config -n fcitx5
# 4. 再起動
sudo reboot
# 5. 再起動後、1回だけ。mozcを入力メソッドに登録する
fcitx5-remote -s mozc
# あとは 半角/全角 で切り替え
この手順は、以前書いた日本語化の記事を置き換えるものです。
変わっていなかったもの
変わった話ばかり書きましたが、そのままだったところもあります。
pipの制限はBookwormと同じ
$ python3 -V
Python 3.13.5
$ ls /usr/lib/python3.13/EXTERNALLY-MANAGED
/usr/lib/python3.13/EXTERNALLY-MANAGED ← あります
pip install をそのまま実行すると止められます。これはBookwormから続いているもので、Trixieでの変更ではありません。仮想環境(venv)を使ってください。
GPIOのライブラリは入っています
RPi.GPIO 0.7.2 ※実体は python3-rpi-lgpio
gpiozero 2.0.1
lgpio 0.2.2
import RPi.GPIO は通ります。ただし中身は rpi-lgpio という互換ライブラリです。実際に回路をつないで動かしたわけではないので、そこは断定しません。
Pibotoフォントは無くなっていました
Raspberry Pi OS の見た目を作っていた Piboto フォントは、探しても見つかりませんでした。文字の雰囲気が少し違うのは、そのためのようです。
まとめ
この記事の要点
・Imagerの手順は変わっていません。焼き上がるものが変わりました。
・Bookwormに戻すなら、目立つ「Legacy」は32bitです。64bitは Raspberry Pi OS (other) の中です。
・firstrun.sh はもうありません。cloud-initに変わりました。
・初回起動は7分近くかかります。固まったと思わずに待ってください。
・VNCは raspi-config だけで有効になります。TigerVNCサーバーは要りません。
・日本語入力は ibus-mozc では動きません。fcitx5-mozc を使ってください。
いちばん困るのは、手順が同じなのに結果が違うことだと思います。操作を間違えていないので、間違いに気づけません。
中の人
自分のラズパイのOSが変わってたこと、この記事を書くまで気づいてなかったんだよね。手が覚えてる作業ほど、中身を見なくなる。
当サイトの記事のうち、日本語化とVNCの手順は、この記事の内容で置き換えてください。それぞれの記事にも、この記事への案内を足しておきました。
確かめていないことも書いておきます。
・Bookwormでは同じ手順が通っていたのかは検証していません。この記事は「Trixieでこうだった」という記録です。
・Bookwormからのアップグレードは試していません。財団はクリーンインストールを推奨しています。
・GPIOの実動作は確認していません。
